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“考え続ける”学校に「問い」が導く生徒の「選択」力

森下先生
サレジアン国際学園世田谷中学高等学校 校長 シスター 森下 ワカヨ 先生

「善いものを選ぶ力」を育てたい

本校の教育の根幹には、キリスト教精神に基づいた、創立者ドン・ボスコの教育理念があります。その本質は「自分にも他者にとっても善いものを、自ら選び取れる人を育てる」というものです。

もともと女子校として歩んできた本校ですが、2023年に共学化し、本科クラス・インターナショナルクラスを設けました。しかし、培ってきた歴史や理念が変わるわけではありません。性差だけでなく、海外から帰国した生徒なども集まる環境で、多様性と包摂性を実現する学校として生まれ変わることが、本校が目指す「自分にも他者にも善いものを選択できる」ことにつながると考えたのです。

その教育は、変化が激しく予想困難と言われる現代社会に求められる力との親和性が高いもの。本校ではこれを教育の柱に据え「21世紀に活躍できる世界市民力を培う」を目標に、授業や校則の見直し、日々の学校生活の中で生徒が“自ら考える姿勢”を徹底して大切にしています。

PBL型授業の全教科展開で、生徒の“考え、選ぶ力”を

特に力を入れている取り組みの一つが「PBL型授業(Problem-Based Learning)」です。教員が「正解が必ずしも1つとは限らない問い」を投げかけ、生徒は短時間で自分なりの答えを考え、グループで意見を交換し合い、自分の考えをまとめ直すという流れで行われます。

通常、このような授業はプロジェクト方式で長期にわたって実施することが多いのですが、本校では日常の授業の中で、ことあるごとにその“仕掛け”を盛り込んでいることが特徴です。例えば中1理科では、「脊椎動物の種の多様化に最も貢献した形質は、摂食器官・体表・移動器官のうちどれか」という問いが与えられました。

この手法は芸術や体育などを含めたすべての教科で導入されています。音楽では「『ただの音(生活音)と『音楽』はどこで線引きされる?」という問いを論じたことも。つまりどの授業でも、生徒は「自分で考え、他者の意見を聞き、考えを深める」体験を繰り返すのです。まさにドン・ボスコの理念を現代に即した形で体現した取り組みだと言えるでしょう。

数年かけて探究する「ゼミ」と「SAP」――深く学ぶ喜びを知る

もう一つの大きな特徴は、中学2年から高校2年までの4年間にわたる本科クラスの「ゼミ」形式の探究活動で、生徒自身がテーマを見つけ、調べ、考え、まとめていきます。こちらはPBL型授業とは逆で、長期にわたり一つのテーマを深掘りしていきます。多くの学校では探究活動が1年単位で行われることと比べても、かなり長期間にわたって研究を重ねていると言えるでしょう。その過程で教員は伴走者として助言を行いますが、主体はあくまでも生徒自身です。そして、インタークラスには中学1年から高校2年生まで5年にわたり「SAP(サレジアン・アカデミック・プログラム)」という英語で考える特別なプログラムの探究活動があります。

また、サレジアンフェスタという学園祭での研究発表の他、「Accademia Salesian(アカデミア サレジアーナ)」と銘打った研究発表会があり、高校3年生をのぞく全学年の探究成果を全校に掲示して、大規模なポスターセッションを開催しています。

もちろん、4年間のうちに興味・関心が変化することもあるでしょう。しかしそれもまた学びの一部。「続ける中で変わっていく」という経験自体が、生徒にとって大きな財産になるはずです。

生徒が“考え続ける姿”と“変わる瞬間”に出会える喜び

このような教育環境だからこそ、生徒が考え続ける姿や、自分の力で進むべき道を切り拓いていく姿を目の当たりにできます。それは、教育者としてこれ以上ない喜びです。また、正解なき学びを届けているからこそ、教員も自身の教育アプローチに自問を重ねながら、常にチャレンジしている実感が得られるでしょう。「こうしてみよう」というアイデアを実行に移しやすいというやりがいも感じられるはずです。

本校が求める教員像は、単に知識を伝える人ではなく、生徒と一緒に考え、学び、成長できる人です。多様な生徒たちを理解し、それぞれの良さを見出し、伸ばしてほしい。ときには寄り添い、ときには挑戦を促しながら、生徒が「自分にとっても人にとっても善い選択」をできるように導いていける、そんな教育者を歓迎したいです。

生徒も自分自身も大切に

実際に本校の卒業生たちは、社会でさまざまな分野において活躍しています。中高時代に「自分に合った道を探す」「人や社会に自分はどんな形で貢献できるか」という考えを培ってきたからだ、という頼もしい声が多いですね。

本校はカトリックミッションスクールとして、生徒一人ひとりを大切にするからこそ、教員も自分自身を大切にしてほしいと思っています。あとは、やはり多様性理解をもって、異なる意見や価値観も受け入れられる人であること。そして繰り返しになりますが、本校は生徒が“考え続ける”ことを重視し、自らの未来を自ら選び取る力を育てる学校ですから、教員自身も日々考え続け、生徒にその姿を見せてほしいですね。

(このインタビューは2025年9月に行いました。)

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