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一枚一枚違う花びらのように、生徒の「個」を伸ばして

甲南高等学校・中学校 校長 山内 守明 先生

私学の教壇に立つなら「建学の精神」「教育理念」を忘れないで

教職を目指すみなさんに、私が必ずお伝えしていることがあります。それは、同じ教職といっても、さまざまな選択肢があるということです。

中学校なのか、高校なのか。あるいは公立なのか、私立なのか。本校のような私学を目指されるのなら、「建学の精神(理念)」を大切にしてほしいと思います。その学校がどのような目的で創設されたのか、すなわち「どのような人物を育てたいのか」を十分知ったうえで、自らが立つ教壇を決めてほしいのです。

公立校は創立時に私学のような明確な「建学の精神」はありません。教育基本法に基づいてその運営方針が定められます。学校運営の舵を取るのは教育委員会であり、学校はその指示に従って動くイメージです。

もちろん、それが悪いのではありません。独自の理念を掲げ、そのための個性あふれる教育を実践する一員として、教員自らも学校づくりを担えるのが私学の醍醐味だということです。だからこそ「建学の理念」をよく理解し、そこに共感できるかを大事にしていただきたいですね。

すべて人は皆天才であり、世界に通用する紳士を育てたい

そこで、この場をお借りして本校の理念をお伝えさせてください。本校は、実業家であり、のちに文部大臣を務めた平生釟三郎が1919年に創立した学園です。

教育の本質とは「ひと創り」であったはず。しかし明治維新以降の教育は、西洋に追いつくために知識偏重の色合いが濃い状態にありました。そこで、横並びでの知識の詰め込みや、画一的な人材の「大量生産」を行うのではなく、一人ひとりの個性を伸ばし、社会に貢献する人材を育成したいという願いを込めて本校を創ったのです。

平生はこんな言葉を遺しています。「すべて人は皆天才である」と。その思いを教育理念として掲げたのが「人格の修養と健康の増進を第一とし、個性に応じて天賦の才能を啓発するにあり」という言葉です。すべての生徒がそれぞれ持っている才能を引き出し、自分でものごとを考えられる自立した人間を育てることを、本校の存在意義としました。

そして、生徒たちに目指してほしいゴールとして「世界に通用する紳士たれ」という教育目標を定めたのです。

これらは、創立から100年余が経過した今に至るまで、まったく変わっていません。実際に本校の長い歴史の中からは、名だたる経済人や研究者・アーティスト・アスリートらが巣立っています。「世界に通用する紳士」を多数輩出してきたのです。OBたち本人の意欲はもとより、歴代の教員たちが本気でこの理念を実践してきたからこそでしょう。

教科知識の伝達ではなく、教科の面白さに気付かせてほしい

このような全人教育の中では、もちろん学業も大切です。しかし、先ほど申しましたように、本校が求めるのは知識の詰め込みではありません。教員には「教科としての知識」の伝達ではなく、その教科がいかに面白いかを気付かせてほしいですね。

例えば私は理科の教員ですが、初回の授業でこんな話をします。「みんなのお母さんは指輪をしているかな? それは何でできてる? 金(きん)? 実はその金は、太陽とは違う恒星の超新星爆発の爆風の中でつくられたものなんだよ」。そして、実物の隕鉄を触らせ、恒星の核融合でつくられた様々な元素が今地球にあることを話します。

そうすると、生徒たちは「もっと知りたい!」と目を輝かせて喰いついてくるんですよね。そして「科学」という学問に興味を持つんです。こうなれば、生徒たちは自走的に学習を始めます。主体的学習者「アクティブラーナー」です。大事なのは、教員がその教科を通して何を教えたいのかというポリシーを持てるか。ちなみに私は、神羅万象に対する「科学的なものの見方」を生徒に伝えたいと考えています。

確かに、それですべての生徒が科学の面白さに目覚めるわけではないでしょう。しかし、たとえ1割でも生徒の中で変容が起きてくれたら、その子が世界を変えるかもしれないと期待しながら、日々生徒に接しています。

「上手な教師」になろうとせず、フラットに生徒に接しよう

したがって、本校の教員には「いかに探究心のかたまりのような子を育てられるか」を期待したいです。

ただしそこに必要なのは、教える技術ではなく人間的魅力。若手教員の研修をしていると感じるのですが、どの先生も授業はそれなりにうまいんですよ。ソツなくこなせます。しかし、それだけなら映像教材でもできること。また、若い教員ほど、つい生徒に「上から」接しがちです。若いぶん生徒になめられたくないという気持ちが働くのか、「教師」という権威の力で生徒を従わせようとします。「上手な教師」をやろうとしているのかもしれませんね。

しかし、それでは生徒はついてきません。そうではなく、フラットに接してほしい。彼らは生身の人間です。花びらが一枚一枚同じではないように、生徒も一人ひとり異なる人格を持つ存在です。その「個」とリアルに触れ合い、その深みに触れてください。

教育理念に、あなたの教育観を乗せて

「卒業後に生徒が自分(教員)を訪ねてきてくれる」のも、人事異動がない私学ならではの魅力でしょう。特に本校の場合、親・子・孫の3代にわたってOBという家庭も少なくありません。もうすぐ4代目が入学する世代にもなってきました。「わが子にも、孫にも、自分の母校に通ってほしい」と思ってもらえるほどOBの愛校心が強いのも、本校の特徴です。

このように、学校には育てたい人物像や理念があります。あなたが育てたい生徒像のイメージはどんなものですか? 教育理念にそれを乗せ、ぜひ次世代を担う人物を育ててください。そしてそのために、生徒の小さな変化に気付ける教育者であってください。
それができたとき、卒業後も彼らはきっとあなたに会いに来てくれるはずです。

(このインタビューは2022年6月に行いました。)

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