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コラム

大学入試改革おさらい 英語編

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2019/11/09

そもそも、なぜ民間試験を活用するのか

グローバル化の進む社会へと生徒を送り出す教師の立場からすれば、英語教育の重要性に異論を唱える人はほとんどいないでしょう。ところが2021年1月より始まる大学入試の新制度、特に英語民間試験の活用に関しては現在、混迷の度合いが深まっています。ここではその是非を問うのではなく、大学入試改革に英語民間試験活用が導入された経緯や、子どもたちの英語力の現状、教員に求められる考えを中心に見ていきます。

大学入試、しかもセンター試験に代わる新しい入試制度の中で、英語民間試験が活用されることを知ったのは「ここ半年ぐらい」という方も多いかもしれません。けれども、この話は降ってわいたようなものではなく、大学入試や高校との接続のあり方を議論した文部科学省の中央教育審議会で、平成26(2014)年前後から提案されてきました。同時期に小委員会「英語教育の在り方に関する有識者会議」では、コミュニケーションに必要な「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能を小中高校で総合的に育成し、また、その技能を大学入試でも評価することが必要だとの提言がされています。そして、「4技能を測定する資格・検定試験のうち、国内外で広く受け入れられている試験について、生徒の英語力の評価、そして入学者選抜に積極的に活用を促進する」ことが打ち出され、高大接続改革(大学入試改革のこと)や、小中学校の学習指導要領改訂に反映されるようになったのです。

その後、英語の民間試験実施団体や専門家を交えた協議会が発足し、英語4技能を大学入試に活用するための情報提供を始めました。各試験のスコアや級が、語学の習熟度を測る国際的な基準CEFR(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment:ヨーロッパ言語共通参照枠)の、どのレベルに相当するかの比較表を作成し、各試験の形式や受験方法などを紹介してきたのです。ライバル同士である複数の民間の試験団体が大学入試改革に向けて連携するのは、当時、画期的なことと受け止められました。

英語の「即興力」は先生がロールモデルに

では、今の生徒たちは英語力のどこに課題があり、4技能をバランス良く育成するためにどのような授業改善が求められるのでしょうか。国立教育政策研究は、毎年、小学6年と中学3年を対象にした「全国学力・学習状況調査」、いわゆる学力調査を行っていて、その結果から、望ましい授業のあり方を提案しています。今回、中学校の「英語」で初めて学力調査が行われたのをきっかけに、聞くこと・読むこと・話すこと・書くことの4技能で、望ましい授業展開を「授業アイディア例」として刊行しました。

日本の中学生の英語習得状況の課題は、「読むこと」「書くこと」はできても、相手に質問をするために話を「聞く」ことや即興で英語のやり取りをする「話す」技能にあります。たとえば、来日予定の留学生からの音声メッセージを「聞いて」、部活動についてのアドバイスを英語で「書く」という問題は、正答率が8.5%と低いものでした。そこで、「授業アイディア例」では、音声を聞く前に活動の目的を把握する、聞いた後に情報を整理する活動を挟んで、その上で英文を書く……といった授業の流れを示しています。そして、英語を聞いた後に、何をしなければいけないか、目的を持って英語を聞くことを日常的に繰り返す、できるだけ1回で聞き取れるよう指導する、などのポイントも挙げています。

「即興で伝え合う力」は、新学習指導要領で新たに設定された領域「話すこと[やり取り]」に当たります(他に「話すこと[発表]」があります)。調査では、ユイコとアラン先生のやり取りを聞き、その内容を踏まえて会話が続いていくように即興で質問をする、という問題が出ました。これも正答率は10.5%(参考値)と低いものでした。「授業アイディア例」では、英語の先生が生徒とのやり取りを楽しみ、会話のモデルを示すことや、教科書の対話文を基に、会話を継続・発展させる方法について考えるグループでの話し合い場面を設定することがポイントだとしています。

小学校高学年で2020年度以降、外国語活動が「英語」として教科化されるに伴い、英語に親しみ、意欲のある児童が増える一方、この先、英語に苦手意識を持つ児童も出てきます。学力テストにおける中学生の英語の4技能習得状況は、小学校での4技能を意識した授業や活動の浸透度を測るためにも、今後も注目すべきところでしょう。

20年先を見つめられる教員に

英語民間試験活用が何年も前から決まっていたにもかかわらず、国や実施団体、大学からの情報提供が後手に回ってしまったこと、そのためにどの試験を受けたらいいのか高校生が迷い、現場の教職員や保護者にも不安が広がっている、などの状況が生じたことに対して、関係者は大いに反省すべきでしょう。しかし、だからといって「リーディング」「リスニング」だけで評価する試験に後戻りはできません。英語の4技能を伸ばす教育や評価を否定してしまっては、日本の英語教育がガラパゴス化し、国内外で活躍できるグローバル人材育成が叶わなくなる恐れがあるからです。

ここ数年で高校の英語の授業や、高校・中学入試で英語の4技能を強く意識した授業改善が始まっているのは、学習指導要領が改訂されたことも理由のひとつですが、大学入試に英語民間試験の活用が決まったことの影響も大きいのです。小学校高学年で英語を学び始めた小学生が中学、高校、大学と進学していくのですから、大学入試が従来のままで良いはずはなく、当面は混乱が続くとしても4技能を評価する必要性は変わりません。ぜひ、教員を目指す皆さんには、目先の課題だけでなく、10年、20年先の未来を見つめながら、大学入試の変革期のうねりを乗り切ってほしいと思います。

CEFR:ヨーロッパ言語共通参照枠 -wikipedia

平成31年度(令和元年度) 全国学力・学習状況調査 授業アイディア例 -国立教育政策研究所

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