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SDGs時代の国際理解教育とリーダーシップ開発[STC 研修レポート2021]

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企業や学校、地域社会から個人まですべての人がSDGs達成に向けて行動を起こすことが求められています。また、新学習指導要領には「持続可能な社会の創り手」の育成が盛りこまれ、SDGsを授業の題材や入試問題として扱う学校も増えています。今回のSTC研修では、元国連職員としてSDGs策定のプロセスから広報にかかわり、現在は慶應義塾大学で非常勤講師を務める安部由紀子氏を講師に招いてSDGsの理念や背景、教育との関連、効果的な実践例について研修いただきました。後半は明法中学・高等学校の鎌倉好男教頭の実践紹介とワークで、明日からSDGs教育に取り組めるヒントを考えました。

■研修講師
SDGs研修講師 安部由紀子先生

安部由紀子氏  国際広報スペシャリスト、慶応義塾大学非常勤講師、元国連職員

SDGs研修講師 鎌倉好男先生

鎌倉好男氏  学校法人明法学院 明法中学・高等学校 教頭

 

SDGsとは? 国連と世界の動きから振り返る

講師の安部由紀子氏は、ジャーナリストとして約10年、国連職員として広報を7年担当するなどコミュニケーション分野でのキャリアを積んだのち、米国政府系シンクタンクThe East West Centerのリーダーシップ・フェローを経て、慶應義塾大学や東京女子大学で教員を務めてこられました。

一貫して「平和」や「クリエイティビティ」「社会に良いこと」などを価値観として持ち、キャリア構築をされている安部由紀子氏。今回、STC研修に初めてご登壇いただきました。

SDGsは、安部氏が国連職員時代に主にかかわった仕事の一つです。その誕生から世界への広がり、現在の進捗状況までを実務経験を交えながら研究・教育活動をされています。研修前半はSDGs策定に至る背景を、国連や国際社会の動きから解説頂きました。

SDGsの背景:国連「開発」活動の歩み

SDGsの正式名称は「Sustainbable Development Goals:持続可能な開発目標」。この「開発」とは、国連の活動の3本柱である「人権(人道)」「開発」「平和」の一つで、教育や不平等、社会インフラを長期的な視点で構築していくことを指します。第二次大戦後、国連が創設されたのち、1950年代から60年代初めのアフリカ諸国をはじめとする地域の「非植民地化」が始まり、新興国家が誕生していきます。国連は60年代から10年区切りで「国連開発の10年」を定めて、支援や活動をおこなってきました。

冷戦終結後は、難民、紛争、感染症などの議論の幅が広がり、90年代には世界の規範づくりにむけた国際会議がさかんに開かれるようになります。例えば92年にはブラジルのリオ・デ・ジャネイロで国連環境開発会議(地球サミット)が開催され、95年の世界女性会議(開催地:北京)では、男女共同参画の基本となる北京宣言が採択されています。これらの会議や採択された宣言に基づく多くの開発目標を踏まえて、一つの枠組みとしてまとめたものがSDGsの前身となる「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)」です。

MDGsは8つの目標と21のターゲット、60の指標のもと、達成期限を2001年から15年までとして展開されました。その成果と課題を引き継いだのがSDGsです。地球温暖化や移民・難民、テロリズムなど国家の単位ではなく地球全体で考えるべき課題に、多くの人の声を反映させ「より透明化された」プロセスを経て採択されました。「経済」「社会」「環境」の3側面を調和させ、「誰ひとり置き去りにしない(No one left behind)」の理念のもと2016年から30年までの国際目標として、現在取り組まれています。

経済界もSDGsを意識

「なぜ、SDGsを達成することが求められているのか」。背景にある気候変動や生態系、消費と生産などの地球規模の課題があることは、子どもたちは小学校の社会科や理科などで学び始めますので、中高でSDGsを扱う際には、改めて教科内容や学齢にふさわしい取り上げ方が求められます。

「子どもたちが社会人になったときに求められる資質や働き方は、20、30年前とは違う、SDGs的な価値観を含んだ要素が求められるようになっている」と安部氏は強調します。1990年代以降、CSR(企業の社会的責任)の概念が広がり、社会貢献の意識が企業にも根付いてきました。企業が守るべき労働環境の原則を定めた「国連グローバルコンパクト」や、投資家に環境や社会、企業統治(ESG)の観点から意思決定をするよう求めた「国連責任投資原則(PRI)」など、ビジネス界にも国連が働きかけて持続可能な社会の実現に努めてきた歴史が紹介されました。

経済活動とSDGsの関連性や、知識の整理の仕方は、中高での教育活動に是非つなげて頂きたい内容。中学校では職業調べや職業体験をする際にSDGsを意識した企業と関わることもあります。また、高校では卒業生や、社会で活躍する企業人の講話を聞くなど、企業との接点も少なくないからです。

自分の国以外にも目を向けて考える

「SDGsを知識として終わらせるのでは無く、2030年まで残りの9.5年を一人ひとりが意識して、現実の世界を理想に近づけるために何ができるかを考え、行動することが大切」と安部氏。達成に向けた舞台として「学校」は欠かせない場所になります。身の周りのさまざまなことに関わってくるSDGsは、教育のどの分野でも紐づけることができるといっても過言ではありません。安部氏が実践した、新聞記事からSDGsを考える授業、社会課題を解決するビジネス・コンペティション、英語のクラスでSDGsの背景を踏まえながら翻訳、広報スキルを学ぶ授業の例などが紹介されました。

子どもたちにとって身近な事象と結び付けて学べるSDGsですが、地域や日本国内での視点にとどまらず、世界との関係の中で考察させることを忘れてはならない、と安部氏は言います。SDGsは世界の誰もが達成に関与しなければならない、と言っても、先進国と開発途上国では、経済、インフラ、医療などでさまざまな違いや格差が横たわっています。

「スタート地点から違いがある以上、先進国にいる人がより地球規模で、誰ひとり取り残さないことを考えていかないと、SDGs達成は望めない。豊かさの特権を独り占めするのではなく、78億人が豊かな生活を送るために、経済、環境、社会の3つのバランスをとるかを考える視点が重要。自分の国だけでSDGsを語るのではなく、世界の地勢図を見てSDGsを考える人材が多く育ってくれたら」と締めくくりました。

SDGsは、あらゆる教育活動と関連づけが可能

研修後半は、実際に授業でどのようにSDGsを扱うことができるのか、明法中学・高等学校教頭の鎌倉好男氏による、ワークショップが行われました。

①SDGsを「自分ごと化」する

②担当する教科の授業で実践できる「スモール・アクション」を2つ設定する

ことが、ワークショップの目標です。

鎌倉氏は、カンボジアに教育NGOを設立。学校設立と運営の支援活動に取り組んで来られており、同校では「夏期海外SDGs研修」として、生徒が現地を訪問しボランティア活動を行っています。その経験と知見をベースに、教科書の単元に沿ってSDGsを取り込んでいく授業のスタイルや、学校設置科目として「SDGs」をまるごと扱う授業など、各教科の授業におけるSDGsの先進事例が紹介されました。

グループに分かれたワークでは、「現任校でSDGs教育に関する課題と背景」「その解決に向けた助言」をテーマに意見交換をしました。あるグループから出た課題の一つに、SDGsの教材はあるけれども、教科間の連携や教科横断的な取り組みが壁になっていることが挙がりました。鎌倉氏からは、明法中高での研究体制や、大田区立大森第六中学校がカリキュラムマネジメントの視点を取り入れた「SDGsカレンダー」を作成した例、地域と連携しSDGsを意識した「ゼミ活動」を行う郁文館中高の実践など、具体的な事例紹介がありました。

今回は、SDGsの専門家である安部氏と、学校での実践をすでに充実させている鎌倉氏のワークの2本立てで充実した研修となりました。「SDGsが採択された経緯と、教育現場への導入の事例を知ることができ、勉強になった」「一人の教員で立ち向かうのではなく、学校が一丸となってSDGs教育を考えていく必要性があると学んだ」「グループワークで他校の取り組みを知ることができ、参考になった」「まずは、自分の授業の中で、SDGsについて考える機会をつくる工夫を考えたい」など、参加した先生方のSDGsに対する関心の高さと、授業に導入したいという熱意が感じられた2時間でした。

 

■開催概要:

日時:2021年7月27日(火)16:30~18:30

場所:Zoomオンライン

■講師紹介:

安部由紀子氏

読売新聞記者、国連(United Nations)職員、米国政府系シンクタンク The East- West CenterのLeadership Fellowを経て、現在は国内の公的機関で広報、デジタル広報の戦略づくりに従事する。2020年から現在まで慶応義塾大学にて、2018年から2021年3月まで東京女子大学にて教育研究活動もしている。日本出版学会理事、日本CLIL(言語内容統合型学習)教育学会(J-CLIL) 運営委員 、NPO法人 国際人材創出支援センター(ICB)理事、米国政府系シンクタンク The East -West Center Tokyo Chapter 副会長。

学術分野においては、コミュニケーション分野、リーダーシップ開発、女性のエンパワーメント、CLILなど、実務経験を生かしながら教育研究する。また、SDGs専門家として、産学連携プロジェクトで、教科書『CLIL 英語で考えるSDGs―持続可能な開発目標』(三修社、2021年)執筆や教材づくり、教員トレーニング、企業の社内研修、ビジネスリーダー・一般向け講演、コンサル業務、メディアの番組制作・取材協力等にも従事する。大分市出身。

鎌倉好男氏

私立明法中学・高等学校(東京都)で教頭およびグローバル教育統括を務める。また、国際協力NGOボランティアプラットフォームの顧問として、中・高・大学生対象のオンラインSDGs研修(英語・日本語)の監修を担当。勤務校で実施するカンボジアSDGs海外研修をはじめ、行動に移せるSDGs教育の普及に従事する。専門は「21世紀型教育」「リーダーシップ」「グローバル教育(SDGs教育を含む)」など。米国Walden Universityで修士課程を修了(教育学)し、Harvard Graduate School of Education & Harvard Business SchoolにてCertificate for School Management and Leadershipを取得。東京私立中学高等学校協会より令和2年度優秀教員表彰を受ける。

 

 

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