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授業方略とICT活用のいろは[STC研修レポート2021]

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デジタル庁が発足し、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる昨今、私立学校におけるICTを活用した教育活動は「新たな学び」へと向かっています。若い先生方には新時代に向けたデジタルスキル、特に授業へのICT活用力を高めていただきたいと研修を企画しました。講師は学校や教育委員会のICT化のコンサルテーションを手掛ける(株)スクールエージェント代表取締役の田中善将氏です。効果的な授業方略にICTをどう活用するのか。参加した先生方は、最新の理論を知るとともに、さまざまなツールを体験しました。「面白かった!」「すぐに役立つ」と反響の大きな研修となりました。

■研修講師

授業方略とICT活用 田中善将氏

田中 善将 氏
株式会社スクールエージェント代表取締役

「タブレットがある」では差異化できない時代

国のGIGAスクール構想により、公立学校にも1人1台端末と高速の通信環境が導入され、今年度より活用がスタートしました。もはやデジタル環境が揃っているだけでは、私立学校は差異化を図れない時代となっています。導入から一段階、ステップアップを目指して今回の研修は行われました。講師は(株)スクールエージェント代表取締役の田中善将氏です。講義中もZoomのチャットを通したその場での意見表明、オンライン上のグループ活動である「ブレイクアウトセッション」での話し合い、Google系のツールを利用した同時双方向のワークなど、参加した先生方が協働的な学びを体験できる研修会となりました。

冒頭、田中氏は「1学期のICT活用状況はいかがですか?」と問いかけます。チャットに寄せられた声からは、環境は整っていても各教科で十分な活用ができていない、と感じている先生が多いようです。

そこで、研修の前半は授業方略に関する講義とワークが行われました。アクティブラーニングが始まったとはいえ、授業の大半は教科内容をしっかり教える「カリキュラム学習」がメインです。そこから考えると、ICT活用はカリキュラムの中でどう用いるかが活用促進につながります。参加者の先生が自分の教科の「指導略案」をオンライン上で作成することを通して、ICT活用能力の伸長を図りました。

指導略案は「1.学習目標」「2.計測法の検討」「3.授業構造」の順に検討していきます。Googleの表計算シート「スプレッドシート」をオンライン空間で共有しながら、各自が作業します。あらかじめ田中氏が30人数分作成した指導略案のひな型を確保して、自分の名前に変更して進めます。対面の会場でなくても、こうしたツールを使えば板書したりスライドを見せる以上に、作業がはかどります。研修に参加するだけで、ほかの先生の記入している授業案も一度に閲覧できるメリットもあります。オンライン上のリアルタイムな協働作業に慣れていない先生がいることを前提に、田中氏は入力方法からワンステップずつ、丁寧に指示を出していました。

まず、指導略案シートには「科目/単元」を入力します。たとえば「数学:三角比の相互関係、導入部分」というようにです。そして、生徒の変容をイメージして「授業目標」を記入します。陥りがちなのは「理解させる」「わかってもらう」「身に付ける」といった定義をしてしまうことだと田中氏は言います。「どうなったら理解した、わかったか、身に付いたかと言える学習目標にしなければ、その後ICTを活用した計測が立てづらくなる」からです。たとえば先ほどの「三角比の相互関係」の単元だとしたら、「三角比の相互関係を記述できるようになる。(クラスの100%)」などと書いていきます。クラス全員が書けるようになれば、その授業の目標が達成されることになります。

グループに分かれ「生徒がどうなれば達成できたと言えますか?」と互いに問いかけ合いながら、授業目標を修正していきました。「記述する」「再現する」「例示する」「図解する」「対比する」など、生徒になってほしい姿も具体化していきます。その後、互いのスプレッドシートの欄に、質問や評価のコメントをのこす作業も試みました。普段の研修であれば初対面のグループではコメントしづらい雰囲気になりますが、「1つのチームだと思って、リスペクトを大前提でお願いしますね」という田中氏の声掛けや、好事例のシートをフィードバックする実況型の流れは、これまでにない新しい研修のスタイルです。

計測可能な授業目標を立てるために

続いて、指導案作成の手順の2つめ、「2.計測法の検討」をしていきます。ここが明確にイメージできれば最初の「授業目標」はしっかり立てられた、ということになります。量的・質的両面からどう計測するか。逆算していま一度、授業目標をブラッシュアップしてみます。その後、指導略案をさらに具体化していくため、「ガニェの9教授事象」を元に学習を支援する9つの働きかけが示されました。教員養成課程で学んだことがある先生方もいるかもしれませんが、現場に出てから振り返ると、実感を伴って理解できます。

しかし、ただ9教授事象を並べただけでは良い授業は作れません。田中氏は短期記憶から長期記憶にいたる人間の「記憶のモデル」と9教授事象を関連付け、どこでICTが活用できるかを示します。たとえば、事象1の「注意喚起」、事象4の「新しい事項の提示」はICTが十分に活用できるところです。「ここでは動画や電子教科書、PDF、スライドなどあるものをプロジェクターなどに映してどんどん使いましょう」。そして、事象5の「関連付けて学習の指針を示す」にしっかり時間をかけるべきだと解説しました。

脳の神経科学を基礎に置いた「モチベーションマネジメント」の知識も授業づくりに有効です。それを実感するために、オンラインホワイトボード「Jamboard(ジャムボード)」に、「家族の誕生日にプレゼントしたいもの」を全員で考えて書き込みます。ケーキや花、手紙、旅行など、さまざまなプレゼントが書き込まれました。こうして「やってみる」ことで脳内にドーパミンが出て、前向きなモチベーションが起きているというわけです。逆に負荷ばかりかけると脳内には「大変だ」と感じるノルアドレナリンが出て、今の行動を止めたくなるホルモンであるコルチゾールが放出されるといいます。

さらに、田中氏は授業づくりのさらなるヒントとして、オーストラリア・メルボルン大のジョン・ハッティ教授の研究から、学力向上に強い効果を生みやすい「授業の形成的評価」や「マイクロティーチング」「分散学習」などの指導方法を紹介しました。ちなみに、ハッティの知見は日本でも著書が和訳され話題を呼んでいます。(『教育の効果』2018年、山森光陽訳、図書文化社)

神経科学の知見や世界で話題となった教育分野の研究を、大学の教員養成課程で取り上げる機会はそれほど多くないでしょう。新しい情報やトレンドを自身の授業づくりのヒントにする方法を新鮮に感じた先生も多かったことでしょう。

授業のICT化、4つのステップ

後半は、ICT活用戦略として情報密度と意思・感情伝達の促進、という側面から考えました。田中氏は授業のICT活用は次の「4つのステップを踏む」と述べ、ステップごとに活用の具体例を示しました。特に2)に関しては、主要教科のICT活用具体例が豊富に紹介されました。数学の教員としてだけでなく、ICT活用のコンサルテーションを手掛ける田中氏ならではの情報量です。

1)アナログからICTへの「代替」
授業支援プラットフォームを活用した教材のデジタル化、オンライン授業
2)ICTによる質・量の変化「増強」
動画教材をオンデマンド配信し生徒が繰り返し視聴。提出物へ先生や生徒がコメントを入れてフィードバック。Googleフォームなどを活用した表やグラフの描画。学習者用デジタル教科書への書き込み。掲示板機能を使った学校間交流。音声入力を使った英語学習、など。
3)教育活動の構造変化「変容」
フィールドワークの成果に基づいてデータを分析・集約など。
4)新しい学びの創造

十分なインプットを行ったあと、各自が再び授業略案のブラッシュアップに取り組み、最後に研修内容に関する感想や振り返りを、グループ活動で振り返りました。田中氏は参加者のレスポンスを集約できる「Mentimeter(メンティメーター)」を使い、全体のまとめとしました。Mentimeterも授業で活用できるICTツールの一つです。「授業で一番初めにやるべきことは何か」「本日一番印象にのこったことは何か」などの質問に、参加した先生方が自由に入力することで瞬時に反応を可視化できます。「計測により、自分の取り組みが良かったかどうかが分かる」と田中氏。自身がこの研修の学習効果を可視化して見せることで、研修冒頭の「1.学習目標」と「2.計測法の検討」の重要性を明示して、研修を終えました。

事後アンケートでは「スライドの作り方や講義の構成など、講師の先生ご自身が今日学んだ理論を実践なさっており、大変参考になった」「いくつかのアプリを体験できたため、授業での活用方法を考える上でも役立った」「ICTの活用方法について、たくさんの実践例を見せていただき、大変勉強になる研修だった」「授業の始まりや演習の最中、フィードバックなどのあらゆる場面で取り入れたいと思う内容ばかりで、夏休み明けの授業に活かしたい」など、意欲的なコメントが寄せられました。

ICT環境が整った今、時と場所を選ばず、いつでもどこでも教えられるし学べる、そして先生同士も高め合えるという、まさに未来の授業、教師のあり方が示された2時間となりました。

■研修概要
日時:2021年8月24日(火)16:30~18:30
場所:Zoomオンライン

■講師紹介
田中 善将 氏
(株)スクールエージェント代表取締役
「私らしいICT活用の実現」をスローガンに、教育ICT活用を推進する現役教員。東京学芸大学教育学部を卒業後、中高一貫の私学郁文館夢学園に就職。高校の教員をしながら、教育実践を研究しつつ、教員研修を担当した。
その後、公益財団法人School Aid Japanに出向し、バングラデシュでの教育モデル校設立に従事。日本とバングラデシュの教育を融合させ、無償で最高品質の教育を提供。現地の子どもたちに授業も持ちながら、教頭として採用・教員研修を担当してきた。出向を終え日本に帰国後、中学の担任をしながら同校のICT改革を先導。2016年初頭に一人一台を実現し、現場の教員へのサポートを行なってきた。3年間かけ、汎用的なICT活用のアイディアを携え、スクールエージェント株式会社を起業。Google認定イノベーターとしてG suiteをサポートの機軸に据えた学校向けコンサルティング事業と、個人向けICT活用研修事業を展開中。教育現場に張り付き、先生方一人一人にヒアリングと提案をし、授業での変容を見守っている。提供する研修は、ICTの使い方に終わらず、授業やその他の教育活動の構造ごとに、最も使える部分で変容を実現すべく、先生方個人個人の実践をサポートしている

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