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教員研修・育成セミナーレポート

第1回A スクールコンプライアンス研修[STC研修レポート2022]

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私立学校の教職員は、学校現場でのトラブルにおいては学校法人と連帯して責任を負うことが原則で、最悪の場合は個人で責任を負うこともあります。学校の危機管理問題に詳しく、教員の立場に立った研修を展開している堀切忠和弁護士を講師に迎え、新任教員が身につけておくべき学校での危機管理について学んでもらいました。

■研修講師

堀切 忠和 氏
九段富士見法律事務所 弁護士

私立学校の教職員には基本的な法の知識が必要

私立学校の教職員は公務員ではないため、学校現場でのトラブルにおいて原則的に学校法人と連帯して責任を負う立場にあります。それだけでなく、時には個人として教職員が賠償責任などを負うケースもあります。そのため、私学の教員には、基本的な法律問題への理解が不可欠です。コロナ禍での危機管理やSNSトラブルなど、近年学校で起こるトラブルの事例も多様化しています。

広島県でスクールロイヤーとして活躍するほか、危機管理を中心とした教員研修や、生徒向けのいじめ予防講座などで活躍する弁護士の堀切忠和氏が、学校現場の危機管理・危機対応について講義を行いました。

冒頭では、昨今では弁護士による極端に保護者・生徒側に立った暴走したサポートが見られ、そのことで学校現場が混乱する場合もあること、教育委員会やソーシャルワーカーのケアに支えられる公立校とは違う私立校の危機管理の難しさについて、解説がありました。

学校での危機やトラブルにおいて、先生方に必要なのは民法の基本的な知識です。国や自治体に事案を引き継いでもらうことのできない私立校の先生には、公立校の先生よりもさらに法律の知識が必要になってくるといえるでしょう。と同時に「先生方から弁護士へ教育についての知識を伝えてもらいたい」と、堀切氏は強調します。学校側が弁護士など外部のサポートスタッフときちんと連携をとることで、「教育に強い弁護士」が育っていくといえます。

最近の学校で散見される主なトラブル

講義の中ではまず、①近時の学校問題について、具体的な事例が紹介されました。

一つ目は防災・災害対応です。東日本大震災の時にも注目されましたが、危機の際、最新の災害情報を誰も把握していないことが学校現場での課題だと指摘されました。災害時は学校現場では殺到する保護者の電話対応に追われがちですが、そのためにリアルタイムの災害・防犯情報を誰も知らないという事態が起こります。停電している場合も教員のうち1人はスマホなどでネットの最新情報を把握しておくこと、その最新情報に基づく避難や下校指示が必要なことが説明されました。

二つ目はコロナ禍での危機管理です。最近、コロナ禍で課題になっているのは、不安を抱えた生徒・保護者が先生に対して依存的になることだそうです。依存的な生徒とは距離を置き、同じ学年の先生同士で客観的な視線をもちあうことがベストと堀切氏はいいます。

三つ目は、いわゆる「裏部則(部活動の裏ルール)」についてです。大人の世界ではパワハラになることが、部活動の先輩・後輩間で受け継がれていることがあります。こういった理不尽な要求は、引き継がせないよう教員も注意する必要があります。また、部活動の中で教員が異性の生徒への身体的接触を行うことはセクシャルハラスメントにあたる危険があることを、実際の事例を挙げて伝えられました。

四つ目はコロナ禍におけるオンライン授業で発生した、SNSトラブルの問題です。学校で使用ルールをきちんと決めると同時に、家庭での管理は家庭で行ってほしいことも、保護者にしっかり告げる必要があるとのアドバイスがありました。

最後に、慎重な対応が必要となるLGBTQの問題にも触れました。制服については現在、男女兼用が進められていますが、更衣室やトイレ、修学旅行での入浴・部屋割の問題は各学校によって対応が異なります。女子校、男子校でも例外ではなく、学校それぞれでこの問題を話し合っていく必要があることが説明されました。

「クレームに弱い学校」を乗り越えるには

続いて、②法律家が注目する学校現場~スクールロイヤー像の錯綜について解説がありました。私学法人における顧問弁護士は学校の弁護士であるため、現場のトラブルにおいては教員側の立場と乖離があります。さらに、学校へのクレームは不当要求でも断りにくいという特徴があります。その中で、まずは先生方の悩みを現場から吸い上げていくことがスクールロイヤーの大事な役目だという道筋が示されました。

③学校現場の抱える課題としては、
1.法律に弱い学校
2.議論に弱い学校
3.クレームに弱い学校
の3点が挙げられました。1.については、「私たちがもう少し注意していれば」という先生方の発言が、法律問題を呼び込んでしまう可能性が指摘されました。対処法としては「人として胸を痛めている(道義的責任)」ということと、法的責任を区別して考えることが大切だと堀切氏は語ります。特に現場に不慣れな初任者の先生は気を付けたい部分です。

2.議論に弱い学校については、保護者等に対して「理解してもらいたい」という気持ちから、先生方の対応がブレてしまう危険性が指摘されました。たとえ議論が平行線になっても、そのたびに違う説明をするのではなく、最初からブレない説明を続けることが大事だと解説されました。

3.クレームに弱い学校については、保護者や地域からクレームが来た時、当事者が対応することで悪化するケースが多いことが紹介されました。生徒指導部で対応するなど、対応方法を決めておくことも大事です。さらに、「校長を出せ」という要求にも安易に応じるのではなく、担当部署で冷静に対応することをすすめられました。

1~3を改善する手段として、教職員がきちんと法を学ぶこと、そして教職員責任賠償保険など、保険のバックアップをしっかり行っておくことが提案されました。特に私立校では教員個人が法的責任を負う場合もあるため、各先生方も公立よりも法的責任や賠償の問題に敏感になっておく必要があります。若手や初任者の先生も、賠償保険などについては、学校に確認しておいたほうがよいということが注意点として挙げられました。生徒への「気持ち」とは別に、現実的な手段として、自分や学校を守る知識や備えは、特に私立校の教員にとっては大事なことといえるでしょう。

グループディスカッションでお互いの事例を交換し合う

最後に受講者同士で20分ほどのグループディスカッションが行われ、貴重な意見交換が行われました。それぞれのグループでオンライン授業での悩みやクレーム対応の実例、指導困難な生徒への対応の難しさ、制服の問題など、自分の学校の例を出し合いながら、活発な意見が交わされていました。

時間の関係で発表は3グループのみとなりましたが、「裏部則について、見過ごさずに教員が気づくことが大事」「保護者対応では20分の傾聴が必要」「クレームについては即答せず、いったん預かることが必要ではないか」など、様々な気づきが発表されました。堀切氏からは、「保護者へのクレームを傾聴するのは大事だが、先生が共感を示し過ぎてクレームをエスカレートさせないこともポイント」「リスク管理の観点から、クレームに『即答をしない』ということも大切」等のアドバイスがありました。

最後に、実際の学校トラブルの裁判事例の紹介と、いじめ防止対策推進法上の「いじめ」の定義について解説がありました。現在、学校現場では当事者から「心理的・物理的に影響があって心身に苦痛を感じる」という訴えがあった場合、いじめ防止基本方針にのっとって対応しなければなりません。そのことで判断に迷う教員も多いですが、報告があった場合、大事なのは全てを「いじめ」と決めつけることではなく、「調査して指導をする」ことであることが説明されました。初任者や新任の先生は熱意のあまり、どうしても生徒に同情的な対応をしてしまうことがあります。しかし、その対応が裏目に出て、かえってトラブルが複雑化してしまうケースも少なくありません。今回の講義では法律家の目から見た学校の問題を具体例を交えて解説し、初任者・新任者の先生方に「危機対応の基本」を学んでもらいました。

参加者からは「実際に弁護士の方から判例を元に学べてよかった」「教員視点、法的視点で、こんなにも違うのかと驚きました。私学教員として自分の身は自分で守る、また、他の先生も気遣い学校の一員として今日学んだことを活かしていきたいです」などの振り返りがありました。特に「コンプライアンスや法律の講義は初めてだったので、ありがたかった」という意見が複数見られ、現場の教員にとって貴重な機会となったことがうかがえました。

■研修概要
日時:2022年5月7日(土)16:45~18:45
場所:都内会場(対面形式)

■講師紹介
堀切 忠和 氏
九段富士見法律事務所
弁護士
日本大学法学部法律学科(法職課程)卒業。平成 15 年 10 月弁護士登録。日本私学教育研究所の教員免許更新講習や 10 年研修などで危機管理、クレーム対応のポイントなどの講師を務める。教員目線での学校危機管理を中心に、私学協会や各学校、教育委員会が主催する教職員研修、保護者向け講習、生徒向けのいじめ予防授業など学校関係での講演を年 40~50 件程度行う。また広島県私立中高協会等でスクールロイヤーを務めるほか、流山市いじめ対策調査会など国公立私立学校における現場の問題に広く取り組む。

 

ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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