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第2回 ミスマッチをなくす進路指導研修[STC研修レポート2022]

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せっかく入学した大学を退学する学生が増えています。背景には自分が描いたイメージと大学の教育が違っていた、「行きたい大学」より「行ける大学」を優先してしまい学習意欲が湧かない、などの事情があるようです。こういったミスマッチを防ぐためには、高校時代の進路指導が重要になります。『ミスマッチをなくす進路指導』などの著書がある倉部史記氏を講師に迎え、高校3年間での効果的な進路指導のポイントを学んでもらいました。 

■研修講師


倉部 史記 氏

NPO 法人 NEWVERY 理事 

進路のミスマッチはなぜ起こるのか 

私立学校の教員にとって、進路指導は重要な課題の一つです。生徒1人1人が自分の希望の進路で意欲的に学んでいくことが、進路指導を担う学校教員にとっても理想といえるでしょう。しかし、現状では、せっかく苦労して入った大学を中退してしまう学生がいます。なぜ、このようなミスマッチが起こるのでしょうか? 私立大学の職員として学生のサポートに携わり、さらに予備校で高校生と保護者の進路選択相談支援に携わった経験をもつ倉部史記氏に、現代の若者を取り巻く社会状況を解説してもらいながら、高校での進路指導の在り方を講義してもらいました。  

まず、倉部氏から、簡単なプロフィール紹介がありました。倉部氏は生徒・学生への進路支援に携わる一方で、予備校では社員講師採用の担当も行っていました。学生を送り出す立場・採用する立場の両方を経験し、「有名大学を出たから優秀な人材になれるというわけではない」と語ります。  

倉部氏は、まず「進路指導のゴールは大学合格でも就活でもなく、15年後、20年後に努力をしながら社会で生きていること」と語ります。婚姻率などのデータをもとに、現代の保護者や生徒の感覚と、実際の社会とのギャップを指摘。用意された中から選ぶ「進路選び」でなく、「進路づくり」への転換がいま必要なことを説明しました。  

また、「資格の取れる進路」が高校生には人気ですが、歯科診療所の多さを例に、「資格さえあれば大丈夫という時代ではない」ことを説明。大事なのはその職業で人が余っても、「選んでもらえる」人材になることだといいます。加えて、企業の寿命が短くなる中、新卒で入社した企業が定年まで存在しない可能性が高いこと、成長できる力が必要な時代であることを指摘しました。さらに、高校生活がまさにその力=「強み」を身につけていく時期であるといいます。高校時代は、目先の進路よりも「あなたは何をしている時ときに自分の成長を感じるか?」という問いかけを、生徒にしていくことが大事だとアドバイスがありました。 

進路指導はキャリア教育の中の一つ 

次に、進路のミスマッチの現状をデータを交えて解説していきました。私立の中高一貫校では、保護者の要望もあり、どうしても入試実績重視の進路指導になりがちです。しかし、倉部氏は「進路指導はキャリア教育の中の一つ」と指摘します。そこで、実際のミスマッチの例として、各大学における「4年間(医学部・薬学部では6年間)で卒業する学生の割合」のデータが画面上に提示されました。栄養士を養成する大学でも63%しか4年4年で卒業していないといったうデータ事例があり、ミスマッチの深刻さが指摘されました。  

 望まない中退や留年をする人の原因には大きく、①本当は学びたい内容ではないくないのに来ているところへ進学してしまった ②学力不足で入学後の教育についていけずドロップアウト の2つがあるそうです。その中には、自分の意志ではなく「親や先生にすすめられた」大学を選んでいる層が一定の数います。指定校推薦でも8割が辞めている大学もあり、深刻です。とはいえ、一般入試のほうが大学中退率が高い大学や学部もあり、どの入試方式のによる中退率が高い、低いとは一概には言えませんいえません。  

 やはり入学後についていける学力を養成し続けること、また、特に総合型選抜においては大学側も将来への明確な成長ストーリーを求めていることも指摘されました。大学側は「大学で伸びる学生」を入学させたい意向があり、「入学後」が大事なことが強調されました。 

学校というコミュニティーの中でのキャリア指導 

休憩のあと、再びブレイクアウトルームで15分間のセッションが行われました。今度は、「グループで講師への質問文をきちんと作成すること」がミッションです。  

ブレイクアウトルームでは、早速さまざまな疑問が検討されました。参加者の中には社会人から転職した受講者もおり、学校と企業との違いなども話し合われていました。それぞれのグループで議論をリードする係、記録をする係など、上手に分担をしながらセッションを進めている様子がうかがえました。  

メインルームに戻り、質疑応答に入りました。担任スキルとして、特に私学では要求されることが多いキャリア教育につて、「学校というコミュニティーしか知らない自分たちが、どうキャリア支援をしていったらいいか」という質問が出ました。10年後にどんな職業が残っているかわからないとされている現代、「どんな職業が残るかというアドバイスが難しい」という意見には、「どんな職業が残るか?と聞かれたら、『わからない』と答えればよい」と小林氏から答えがありました。ただ、社会の変化の激しい今、これからの子どもたちは「初職は転職するつもりで就く」という心構えのほうが生きやすいと指摘。どの職業という話ではなく、一般の教員はキャリア全体についての考え方を指導することが大事だというアドバイスがありました。 

ミスマッチを予防するための3つの柱 

では、実際の進路指導で、先生方が今すぐできることはなんでしょうか。倉部氏は進路指導では「学問・職業理解」「学校理解」「自己理解(なぜそれを学びたいのか)」の3本柱3本柱が必要だといいます。3本の柱について、順を追って解説がありました。  

1.学問・職業理解
ここで、倉部氏から受講者へクイズが出されました。大卒者の学歴記載には「学士(工学)」といったように専攻が記されますが、この専攻が現在いくつあるかという質問です。増えていると感じた受講者が多かったようで、チャットで100前後の数字が多く挙げられました。正解は受講者の予想を大きく上回り「約700」でした。選択肢が多いだけに、たとえ生徒が自信をもって学科を挙げることができても、先生が踏み込んで「それを学んでどうなりたいか」「具体的に何を勉強したいのか」を聞いてあげることが大事だそうです。さらに、生徒が例えばたとえば「声優」や「漫画家」といった志望を述べた場合、やみくもに反対するのではなく、どんなアドバイスが必要なのかなど、具体的な例を解説してもらいました。  

2.学校理解
ミスマッチを防ぐために、文・理、両方のオープンキャンパスを体験させることが必要、と倉部氏。また、大学の規模の大小・アクティブラーニングの多さ・実学重視か研究重視かなどは大学によって全く違うので、「DP(ディプロマポリシー)=学びの方向性」「CP(カリキュラム・ポリシー)=学びの実現のための用意」をしっかりと確認する必要があることを強調しました。  

3.自己理解
自己理解をすすめるには、やはり高校時代の体験が大事です。例えばたとえば、「ロボットを大学で学びたい」という高校生達たちにロボット作りの体験をすると、体験後に理系から文系へロボット以外の学科や文系へ進路変更する生徒が必ず何人か出るそうです。大学のオープンキャンパスは「おもてなしの場」になってしまうので、生徒がリアルな将来を感じられる体験や、ウイークデーの講義見学が大事、と説明がありました。  

最後に、進路指導スケジュールについて解説がありました。特に第一志望に入れず併願校に進んだ場合、ドロップアウトする可能性は高くなるため、併願校に魅力のある学校を選ぶ必要性が指摘されました。「大学側もミスマッチには困っている」ことが告げられ、講義が締めくくられました。 

質疑応答で悩みに答える 

最後の15分は質疑応答にあてられました。「有名大学にこだわる保護者にどう理解を得ればいいか」という切実な質問には、「目線を変えて欲しい時ときは、有名大学でない大学の就職率などもデータで出すとよい」などのアドバイスがありました。また、「高大連携で大学を巻き込むにはどうすればいいか?」という質問には、「実は高校から大学に働きかけた方ほうが、大学側も動きやすい」という実情も告げられました。振り返りでは「オンラインで2時間半は長いと思っていたが、内容がとても充実していたので、最後まで興味深く聞くことができた」「自分の安易な一言によって、生徒の進路選択にバイアスがかからないように気をつけなければと感じた」「面談時の生徒への効果的な声かけの仕方を学ぶことができた」など、前向きなコメントが寄せられました。オープンキャンパスや高大連携につなげたいという振り返りも多くみられ見られ、先生方の具体的な取り組みにつながる講義体験だったといえます。 

■研修概要
日時:2022年62日(土)17:00~19:30
場所:Zoomオンライン 

■講師紹介
倉部 史記 氏
NPO 法人 NEWVERY理事 

日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。修士(政策・メディア)、学士(工学)、学士(教養)。私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。全国の高校、大学および企業、NPO などと連携してプログラム開発や情報発信、進路指導に関する研修講師を務めている。兼任として NPO 法人 NEWVERY 理事、追手門学院大学客員教授、三重県立看護大学 高大接続事業 外部評価委員、主体的学び研究所フェロー。文部科学省「大学教育再生加速プログラム」委員会専門委員(入試改革・高大接続ほか)。著書に『ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)ほか。

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