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第8回 幸せの国フィンランドの学ぶこと・働くこと[STC研修レポート2022]

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PISAの学力ランキングで常に上位にランクインする教育先進国・フィンランド国民の幸福度ランキングでも5年連続で1位に輝き、スタートアップ企業も数多く生まれています「生きる」「働く」「学ぶ」をつなぐ、フィンランドの学びとはどんなものなのでしょうか。NPO法人学校の話をしようの寒川英里を迎え、フィンランドの教育の実態を学び、日本の教育へのヒントを探ります。

■研修講師

講師: 寒川 英里 氏 

NPO 法人学校の話をしよう 代表理事

 

なぜフィンランドなのか 教育に求められる変化とは 

今、対話を中心とした生徒主体の学びが求められています。しかし、学校が変わっていくには教員全員の意識をまず変える必要があり、苦戦している先生方も多いのではないでしょうか。本研修では学校現場で先生たちと対話を進めながら新しい学校づくりをサポートしている寒川英里氏を講師に迎え、フィンランドの教育を紹介しながらこれからの学校の在り方を考えていきます 

まず、寒川氏から自身の経歴について説明がありました。採用支援と人材育成に携わっていた寒川氏ですが、偶然参加したフィンランドの教育見学ツアーに感銘を受け、自ら教育ツアーを企画するようになりました。人事の仕事をする中で、企業で働く人が受けた過去の教育の影響が非常に大きいことを実感したという寒川氏。そのため、フィンランドの教育に注目し、その情報発信をするようになったといいます。 

 この後、研修参加者には簡単な自己紹介と、本研修への参加理由を述べてもらいました。やはりフィンランドの教育に以前から興味をもっていた参加者が多く、研修への期待が感じられました。 

 寒川氏は「先生自身がどんな仕事観をもっているか」「どんな学習観なのか」が、授業に大きく影響すると指摘します。そして、教育に正解はないが、「生きる」「働く」につながるフィンランドの教育観を一つの例として参考にし、何かを持ち帰ってほしいと語りました。 

 

フィンランド教育の概要とバックグラウンド 

次に、フィンランドの教育の概要が説明されました。フィンランドは幸福度ランキングで常に上位に位置する福祉国家です。IT立国でもあり、人口550万人の国の中でいくつものスタートアップ企業が生まれています。教育は無料で提供され、PISAのランキング上位の国でありながら、詰め込み教育をしていないことで注目され始めました。 

加えて、なぜフィンランドの教育が今のような形になったのか、そのバックグラウンドが説明されました。1990年代のソ連崩壊で貿易をソ連に依存したフィンランドも不況にみまわれます。そこから他国に依存しない自立した国づくりが模索され、大きな教育改革が行われたといいます。ここで、フィンランド教育に関する10分ほどのドキュメンタリ―ビデオが流され、教育体制の概要が示されました。 

さらに、寒川氏が実際に教育ツアーで紹介している保育園の様子などが写真で紹介されました。フィンランドの保育園では2歳くらいから、今日やりたいことを各自が自分で選びます。集団行動が多い日本の保育園・幼稚園との大きな違いです。全員で取り組む遊びもありますが、その中でも新しいアイデアが出れば、違う遊びが次々と始まります。子どものアイデアから学びが作られていくのが特徴です。 

また、就学前教育では、その子が何にチャレンジしたいかを保護者と先生と一緒に話し合っていきます。学習を中心とした日本の早期教育とは異なるアプローチです。

 

フィンランドの学校教育とは 

フィンランドでは日本と同じく小中学校が義務教育ですが(2021年より高校も義務教育化)、小学校では明確な時間割がなく、授業の内容は先生が子どもの様子を見ながら自由に組み立てることができるといいます。さらにインクルーシブ教育も定着しており、障がいのある子どもや、移民の子どもは、少人数教室で苦手分野を学ぶこともできるそうです。小学校は13時で終了し、宿題もありません。日本での学習指導要領にあたるものはありますが、小学校でわずか60ページほどだといいます。寒川氏が現地で「教育の中で大切にしていることは?」と聞くと「子どもたちが自分らしくいること」という答えが返ってきたそうです。また、「子どもには失敗する権利がある」ともいわれており、その精神がフィンランドのアントレプレナーシップにつながっていることを感じさせます。 

 高校では実体験が大事にされ、企業と連携した課題解決の取り組みなども行われています。こういった取り組みは日本の私立学校でもよく行われていますが、フィンランドでの取り組みの特徴は、アポイントメントからすべて生徒が担当し、先生はファシリテータに徹することだと寒川氏は説明します。 

さらに、寒川氏が取材した小中学生向けの職業体験施設も紹介されました。また、日本の専門学校にあたる職業学校でも、自分たちの技術や能力を使って地域の人々へ安価なサービスを提供しており(ヘアカットや家具のリペアなど)、社会生活と学校での学びが密着していることが紹介されました。

 

質疑応答と今回の気づき

「自分で考えて決めて行動する」ことがフィンランド教育では重視されると、寒川氏はいいます。「どんな社会を作りたいか」「どんな仕事を通じて社会貢献したいか」と考えながら学ぶことが大切にされているのがフィンランドの社会だそうです。 

一方で、他者との対話の時間も重視されています。教員同士も非常に対話を大切にする、と寒川氏。学校教育の場にはリラックスして対話できるスペースが必ず設置されているそうです。 

最後の20分は、参加者と寒川氏との意見交換の時間になりました。ある参加者から「なぜよいとされるフィンランド教育が世界に広まらないのか」といった質問が出ました。寒川氏からは「国の規模や仕組みによって、すぐには取り入れられない現状がある。ただ、よいエッセンスは取り入れていけるのではないでしょうか」との答えがありました。それ以外にも「今日の学びを学校で発信したい」「生徒が失敗できる環境を作りたい」など、前向きな感想が寄せられました。 

また、振り返りのコメントでも「フィンランドの『実体験を大切にするということが、今自分が進めている経験を大事にする教育にリンクしており、背中を押してもらった気がする」「この教育を日本で実現することは難しいかもしれないが、考え方などのよい部分を少しずつ取り入れられる」「生徒に選択させる機会を増やしたい」など、今後の教育に活かしたいという強い意欲が感じられました。 

ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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