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第4回  ミスマッチをなくす進路指導[STC研修レポート2023]

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せっかく入学した大学を退学する学生が増えています。「行きたい大学」「行ける大学」を目指して受験した結果、入学後に「やりたいこととは違った」「学習意欲が湧かない」といったミスマッチが原因であることが多いようです。『ミスマッチをなくす進路指導』などの著書がある倉部史記氏を講師に迎え、効果的な進路指導のポイントを学びました。 

■研修講師

講師: 倉部 史記  

 

進路選びから進路作りへ 

志望大学への入学が叶わず、意に添わない大学や学部に進んだ生徒だけでなく、苦労して合格した難関大学を中退する生徒や、指定校推薦で進学した生徒も中退するケースが近年、大変増えています。 

なぜ中途退学者が増えているのか。その原因を知り、防ぐ手立てを講じることは、進路指導において、今、重要な課題となっています。 

今回の研修では、私立大学専任職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て、学生の進学・就職サポートに関わってきた倉部史記氏を講師に迎え、オンラインにて、これからの進路指導のより良い在り方について解説していただきました。 

最初に、倉部氏から簡単なプロフィールが紹介されました。倉部氏は予備校職員時代、受験生が難関大学へ合格できるように支援する一方、社員採用も担当していました。多数の大学生を面接する中で、採用する側から見ると、難関大学の学生であっても「これまで主体的に考えてこなかった人」「物事を説明できない人」は多く、「有名大学を出たからといって、必ずしも優秀な人材であるとは限らない」と実感したと語りました。 

そして、進路についての講演会では、「進路指導のゴールは大学合格でも就活でもなく、15年後に社会で独り立ちして、自分らしく生きていられるのかが大事である」と、必ず最初に伝えていると倉部氏は言います。 

 次に、受講者へのチャットでの問いかけを挿みながら、高校生の結婚観・職業観などのデータを提示し、現代の高校生は予想以上に親世代の価値観の影響下にあることを指摘しました。保護者や生徒が思い描く将来と実際の社会には、予想以上に大きなズレが生じているのです。 

現在、「資格の取れる進路」への人気が高まっていますが、これは親世代が「資格が取れる進路=生涯安泰」であると考えているからだと倉部氏は言います。現在、歯科医院はコンビニエンスストアより多くあり、閉院も増えている例を挙げ、ただ資格を取得すればよいのではなくその職業で人が余っても「選ばれる人材」になることが重要だと述べました。 

また、日本経済の変化や、近い将来には現時点で存在していない職業が大幅に増える可能性があることや、企業の寿命が以前より大幅に短くなっている現状を、各種データを提示しながら解説していきます。今後は長く勤められる会社への就職でなく、何度も転職ができるスキルが求められると強調し、まずは現状をしっかり認識し、学生自身が「自分にとって重要な価値の基準や行動の指針は何か」を考え、進路を「選択」するのではなく、自ら「進路づくり」をしていくことが必要だと語りました。 

 

ミスマッチの現状 中退率、留年率を知ることが大事 

次に倉部氏は、中退や留年をせず、4年間で大学を卒業した学生の割合を、国立大学や有名理系大学などの実際のデータを提示して紹介しました。驚くことに有名大学の文系学部でも6~7割、有名大学の歯学部では6年間で卒業する学生は4割を切っています。 

中退、留年の理由には、大きく2つの傾向があると倉部氏は指摘します。一番多いのは、「大学や学部の内容を勘違いしていた」「予想していた学びと実際が異なっていた」というミスマッチによるケースです。 

「『心理学科に進みたい』という生徒に、大学で学びたい内容や進みたい職業を聞くと、『それはマーケティングや情報メディア学科の内容だよ』といったことが少なくありません。こうしたケースは生徒が志望する大学や学部について、しっかりと話し合うことでミスマッチを防ぐことが可能です」と、倉部氏は言います。 

もう一つは「勉強についていけなくなる」ケースです。これは学力が身についていないまま「行きたい大学」ではなく「行ける大学」「行ける学部」を選択した指定校推薦による入学者に多い傾向だと倉部氏は指摘します。 

また、個別の大学のHPを例にとり、受講者に大学の中退や留年、国家試験合格率の実態などを調べるワークを指示しました。大学には中退率や留年率を公開する義務があり、公式HPをよく探してみると、各大学ともに中退と留年の実数を確認することができるのです。「大学名 教育情報の公表」をキーワードに検索すれば、実際の就職実態などを確認できることもアドバイスしました。 

 

大学が求める学生像とは 

そもそも入試において、大学が求めているのは「入学してから伸びる学生」だと倉部氏は強調します。大学にはそれぞれ違いがあり、伸びる条件も大学や学部によって異なります。 

そして入学してから「伸びる」指針となるのが 

・意欲と資質、その学問や進路との相性

・大学が前提としている学力

2点だと指摘しました。さらに、推薦型選抜の入試でも一般選抜と同様に学力試験を課す大学が増えてきている現状を、実際の入試を例にとって紹介します。一方で、公募推薦や総合型選抜の場合は、「目標とする自分像に向かう成長ストーリーや、強い目的意識が求められる」と述べ、「なぜその大学で学びたいのか」、大学の学びを経て「どうなりたいか」が明確である学生が求められていると話しました。 

 

ミスマッチをなくすために必要な3つの理解 

こうした現状を踏まえ、進路のミスマッチをなくすため、 

1.学問・職業理解

2.学校理解(同じ心理学科でも、大学によってどうカリキュラムや学習環境が違うのか)

3.自己理解

の3つの理解が必要だと倉部氏。このうちのどれかが欠けているとミスマッチが起きるため、3つの理解と進路指導の流れをセットで考えることで、ミスマッチの可能性を減らすことができると述べました。 

そして自分の方向性に合った大学、学部を選ぶために、オープンキャンパスなどに足を運ぶことはもちろん、「私に合うのはこれ」と決めつけず、対照的な大学・学部にも、実際に足を運んで比べてみると、逆に選択しやすくなると示唆しました。 

 さらに各大学、各学部の「DP(ディプロマポリシー)」「CP(カリキュラムポリシー)」「AP(アドミッション・ポリシー)を比べて読むことを進言。いくつかの大学を例示し、「読んでみると、実学重視であったり研究重視であったり、地域への貢献を重視していたりと、大学ごとに大きく違いがあります。自分の求める方向性と適合するかどうかを知る一助となります」と話しました。 

また、高大連携プログラムなどで、実際に大学に触れる機会の重要さを強調。看護の実習を体験することなく看護師の道に進み、退学してしまう生徒が大変の多いことを例に上げ、ミスマッチを予防するには、高1・高2など早い段階から学びや仕事の大変な部分を体験する模擬授業などに参加する機会を必ずつくるべきだと述べました。 

最後にまとめとして、進路選択のターニングポイントで、「学問・職業理解」「学校理解」「自己理解」の3つの理解を活用すると、高校生も指導する先生方も楽になり、ミスマッチの可能性を減らせると述べ、少子化だからこそ大学側も協力的になっており、「ミスマッチをなくすための課題を互いに持ち寄って解決する道を探っていけるのでは」とのアドバイスで講義を締めくくりました。 

 振り返りでは、「研修を通じて、想像以上に自分自身が過去の情報やイメージに囚われていることに気づいた」「必要な情報を、厳選したデータで伝えていただいた」「今後は進路の話をする際、中退や留年の可能性について必ず触れていきたい」などのコメントが寄せられ、進路指導の場ですぐに活用できる講義となったことがうかがえました。 

ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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