女子教育の黎明期に、現代にも通ずる教育観を掲げて誕生
本校の教育を語る上で欠かせないのは、そのルーツです。創立者のソフィア・バラは、18世紀のフランス、女子に教育は不要とされた時代にあって、家族の理解により男子と同等の教育を受けた人物でした。
のちに聖心女子学院を創立するにあたり、彼女が書いた学習指導要領には、女子が内省、分析、発問・討議することの重要性が説かれており、極めて先進的なものだったそうです。
現在、聖心会の学校は世界中に普及しており、そのすべてに、かつてソフィア・バラが掲げたスピリットが今も息づいています。ここまでの広がりは、世界の私学を見渡しても非常にめずらしいレベルの規模です。
「あなたがいてくれてよかった」と思われる人を育てたい
そうした広がりの中で、1923年に設立されたのが本校です。このとき、初代学院長マザー・マイヤーは「高きを望め」という言葉を残しています。
それは、社会的な成功を目指せという意味ではありません。「高きもの」とは究極的には神を指しますが、私はそれを「愛に根差した生き方」と解釈しています。身近な家族や友人の中でも、社会においても、「あなたがいてくれてよかった」と思われる存在になることです。
実は本校の生徒たちの多くが、国際機関で働きたいとか、社会貢献したいという志を、目を輝かせながら語ります。大きな夢を抱きつつ、身近な人にも優しく接する人であってほしいと願っています。だからこそ、私たちは人格・行動ともに「一貫性のある教育」を大切にしたいのです。
生徒たちの要望に応えて、原点を忘れないための学びの場を
また、前例や先入観にとらわれず挑む「ファーストペンギン」のような生徒も多いですね。そこにもソフィア・バラの精神が引き継がれているのでしょうし、そうした原点に還る機会を、実際の教育活動の中でも取り入れています。
例えば私の前任地である姉妹校の不二聖心(静岡県)では、「フランスルーツへの旅」というプログラムを実施していました。ソフィア・バラの生家や墓所、ユネスコ本部、ソルボンヌ大学などを訪ね、聖心のスピリットを21世紀にどう生かすかを考える学びの旅ですが、驚いたのは、私が校長として2025年度から本校へ着任したときのこと。生徒たちは私が不二聖心から来たことを知っていますので、私を取り囲んで「私たちもフランスに行きたい!」と言い出しまして(笑)。
私はもともと、生徒たちの喜ぶ顔を見るのが大好きです。そこで教職員と相談し、本校でも希望者を対象に、このプログラムの導入を決めました。子どもたちには、本校の教育の原点に触れながら、世界と自分を繋げる学びを得てほしいですね。
一方で聖心会のこうした世界的ネットワークは、教員にも広がっています。今年も、オーストラリア・ブリスベンの姉妹校で実施された研修に教員を派遣しました。
ラーニングコモンズ・高大連携・通信制課程設置など、新たな取り組みも
学校としての今後の取り組みを、他にもいくつかご紹介します。まず、現在の学習センター(図書館)とその周辺を「ラーニングコモンズ」として整備する計画です。より探究的で主体的な学びのスペースとし、飲食を可能にしたり、サイエンス的な要素を盛り込んだりしながら、より生徒が自分らしく安心できる居場所に生まれ変わります。
また、姉妹校である聖心女子大学に加え、上智大学・国際基督教大学・神戸薬科大学とも高大連携協定を締結しました。UPAS(海外大学進学協定校推薦制度)にも加盟しています。
しかし大切なのは、どの大学に行きたいかではなく、どう生きて行きたいか、そのために何を学びたいかに気付くことではないでしょうか。私たちにできるのは、その機会を増やし、一人ひとりの土壌を“耕す”こと。本校で国内外での体験的学習やボランティア活動が盛んなのもそのためです。
さらに、こうした学びの環境をさらに広げるべく、2026年度からは通信制課程の設置も予定しています。子どもたちみんながみんな、全日制の学校システムが合うわけではないですし、そうである必要もありません。Equality(平等性)よりもEquity(公平性)を大事に、本校の学びを必要とする子どもたちに届けていきたいです。
小林聖心の教壇に立つことで、教員にも成長し、幸せになってほしい
そんな本校において、教員に求めたい素養は明確です。「聖心の教育哲学 Sophie’s Gift」という冊子の中に6つの視点から記されていますが、特にお伝えしたいのは、まず「生涯養成に献身する人」であること。教員という仕事や日常の業務を通して、生徒と共に教職員も成長していく姿勢を大切にしたいと思っています。
次に「寛容と喜びに生きる人」。教員自身も、本校で働くことを通して人生を深め、幸せになってほしいのです。
そして「教育的召命をもつ人」。世界、ひいては教育自体も激しく変化していますが、同時に流されない軸をもっていることが必要です。教員を志す方なら、必ずこの軸、すなわち召命(Vocation)の種を持っているはずですが、その種がどう開花するかはその人次第。でも、皆違うからこそ、本校の教育も豊かで多様になっていくはずです。
小林聖心を愛するすばらしい教職員とともに、生徒たちの教育に共に関われることを楽しみにしています。
(このインタビューは2025年9月に行いました。)




