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コラム

家庭科 | 裁縫・調理から資産形成までを扱う「生きていくための教科」

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2022/02/11
人生のすべてを扱う家庭科

調理実習や裁縫のイメージが強い家庭科ですが、実際は人生のすべてといっても過言ではないほど、広い範囲を扱うようになっています。一方で、男女別の履修など、社会・経済の状況を映してきたという側面も。2022年4月の成年年齢引き下げや新学習指導要領施行ともつながる、家庭科の「今」をお伝えします。

成年年齢引き下げで高まる、消費者教育の重要性

2022年4月施行の民法改正により20歳から18歳へと引き下げられる成年年齢。成年年齢とは①ひとりで有効な契約ができ、②父母の親権に服さなくなる年齢を意味します。つまり、クレジットカードを持つ、ローンを組んでサービスや商品を購入する、などといった各種契約が、高校在学中から親権者の同意なく可能になるということ。警戒心の少ない18・19歳がターゲットとされ、様々な消費者トラブルに巻き込まれるのではないかとの懸念も指摘されています。

「消費者教育」を担う教科

消費行動における意思決定や契約の重要性、消費者保護の仕組みを扱う教科は高校・家庭科。成年年齢引き下げにより、その重要性が一層増しています。「生徒たちがトラブルに巻き込まれないよう、メディアリテラシーや契約と約束の違いなど、消費生活分野は特に力を入れて扱いました」という家庭科の先生も。クレジットカードや電子マネーについてなど、知らなければ適切な判断が出来なかったり、多重債務などの問題につながったりしかねない知識も扱います。「キャッシュレス化が進み、便利な反面、お金が見えにくくなっている。仕組みを知っておくことが、とても大切になっています。」

身を守るための家庭科

大学生など若者が巻き込まれることが多いマルチ商法(連鎖取引)に関することも、消費者教育分野に含まれます。友人や先輩など、個人的な人間関係を通じて誘われることが多いマルチ商法ですが、近年マッチング・サイトやSNS経由での勧誘も増えています。「授業では動画を使って事例を紹介するなど、自分ごとになる工夫をしています。」「時間が許せば、消費生活センターなどの資料にある事例をもとにロールプレイを行うことも。騙す側、騙される側の役割や心理を実際に体験したり共有したりすることで、多くの気づきが得られ、意識に残りやすくなります。」

新学習指導要領で追加される資産形成・投資

2022年4月には、新学習指導要領の施行に伴い、高校家庭科には新しい領域も追加されます。眼を惹くのは「家計管理」の授業で“預貯金,民間保険,株式,債券,投資信託等の基本的な金融商品 の特徴(メリット,デメリット),資産形成の視点にも触れるようにする*”とされた部分。社会保険・社会保障制度などと並び、個人の経済を学ぶ場として必要性は高いはずですが、お金の分野はプライバシーとも隣り合わせであることから扱いもデリケート。金融教育を支援するNPO法人など、外部リソースも活用しながら取り組まれていく分野と見る専門家もいます。

*文部科学省(2018)高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 家庭編

調理実習からライフプランまで

改めて「家庭」という教科を俯瞰すると、その守備範囲の広さは人生そのものであることに驚かされます。一方で、調理・裁縫の実技も、その重要性を失った訳ではありません。「何を食べるか」は生きることそのものと言ってよく、また消費者の権利と責任にもつながっています。着ている服が修繕できなければ困りますし、それで捨ててしまうのであれば、サステイナビリティに配慮しているとは言えません。「被服実習の振り返りで、“手作りのものが高価な理由がわかった”と書いていた生徒がいました。なんでも買えるからこそ、作る大変さを体感してほしい。」手を使う「実習」の大切さも、家庭科の先生は実感しています。

広い守備範囲と限られた時間数

まさに実践的な生きる力を養う教科、と言える家庭科ですが、いわゆる主要教科ではなく、学ぶ時間はとても限られています。多くの高校が採用する「家庭基礎」の標準単位数は2単位。50分の授業で70回。調理・被服などの実習時間とバランスを取りながら、その他の分野を教えていくのですから、十分に時間があるとは言えないのが現状です。また、授業数が少ない家庭科は教員数も少なく、非常勤の先生しかいないという学校も多くあります。「限られた時間内でカバーできるよう工夫するのは当然ですが、一方で、大切なのは周りの先生方や保護者の方の意識。受験科目じゃないから…という思いは、子どもに伝わってしまいますから。」そのために、子ども達が学びの機会を活かせないとしたら、とても勿体ない。

自立の基礎となる、生きていくための家庭科

新学習指導要領で学んでいく子ども達の保護者の中には、中学や高校の家庭科は女子だけだった、という人も多くいます。1958年から1994年(中学校は1993年)まで、中高の家庭科は女子だけの履修でした。男女共修化から30年が経とうとし、教える範囲の重要性もより増す中、生きていくために必要な知識を幅広く教える教科として、これからの家庭科があります。

「消費者教育の目的の第一は、トラブルに巻き込まれないこと。でも、巻き込まれてしまったら対処方法があるということころまで、伝えています。助けてもらえる力も、人生においてとても大切です。自立とは、ひとりで何もかも背負い込むということではありません。」

自立の基礎を学ぶ、限られた時間。子どもたちも、周りの大人たちも、大切にしたいところです。

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