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コラム

オンライン授業⑤ コロナ休校とオンライン授業 海外の対応と課題

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新型コロナウイルスによる休校措置で、学校に通えなくなってしまった子どもたち。この事態に、世界中の学校でオンライン授業に踏み切る動きを見ることができました。環境や法制度などの事情が異なる中、各国ではどのような対応を取ったのでしょうか。オンライン授業を実践したことで新たに見えてきた課題もふまえつつ、世界の事例を追ってみます。

州ごとに対応が異なるアメリカ。公立・私立の格差も

ほぼ全土で、夏休みを挟んで9月までの長期休校を決定しているアメリカ。同国では、たとえば年度や学期の区切りがいつなのかなど、州が教育内容を決める権限を持つことが特徴です。
コロナ下での対応も、州ごとにその判断を行っています。

たとえばカリフォルニア州では、Google Classroomを介して課題の配信や回収などを行いつつ、Zoomで同時双方向型の授業を行うスタイルが主流。しかし、ニューヨーク市ではセキュリティ上の懸念から学校でのZoomの利用を禁止、Microsoft Teamsの利用に移行するなどの動きが見えられます(オンライン授業に関する各ツールの特徴についてはこちら)。

これらオンライン授業実施の課題は、州ごとの違いがあることよりも、むしろ州を問わず公立と私立の間で格差が生まれていることです
先生方のスキルやマンパワーの面で、もともとICT環境が整っていた私立校と、そうでない公立校の差が大きくなっているのです。

公立校では、学校のHP上に『課題と先生からの指示』をアップし、生徒がそれをこなすだけのと言う学校が多くなっています。
オンライン授業の形は取っていますが、「生徒は授業中に課題をこなし、必要に応じて先生が質問に答える」形が主流。先生たちは必死に工夫していますが、課題をやるかやらないかは生徒の主体性に依存せざるを得ず、生徒間の学力差は広がるばかりだと指摘されています。

また、このように生徒に主体が委ねられる自学自習中心のオンライン授業の場合、各家庭のサポートに頼る部分は大きくなります。課題の確認や目配りなどが重要になるためです。学校によっては採点作業を保護者に協力してもらっているところもあり、家庭への大きな負担となってのしかかっています。これらの課題構図は、日本と似ているかもしれません。

各国の休校対応等の状況(出典:諸外国の行動制限等の現状について 厚生労働省)

教育ICT先進国でも、同時双方向型はほぼ初めての経験

コロナ問題が起こる前から、世界最高峰レベルの教育ICTを実践していたのがフィンランドです。
すべての学校で、校内Wi-Fiや電子黒板、1人1台のタブレット(もしくはノートPC)という環境が完成していました。さらに、Google ClassroomMicrosoft Teamsなどと同種の機能を持つ独自の公式プラットフォーム「WILMA」が全国導入済みで、生徒・教師・保護者間の連絡や、成績管理、課題を含む資料共有はすべてここで一元化できていたのです(Google ClassroomMicrosoft Teamsも利用)。

同国では3月16日に非常事態宣言を発令、同月18日からすべての学校が休校となりましたが、すぐさまオンライン授業をスタートさせています。
やはり、従前から国家レベルでその環境を整えていたこと、先生も生徒もそうしたツールの使い方に慣れていたことが大きかったのでしょう。

同時双方向型オンライン授業も行われていますが、こればかりは初めての試みとなる学校がほとんど。先生方が必死に手探りしながら、授業に工夫と改善を重ねていったのは、他の国と同様です。

隣国の韓国も教育ICT先進国です。
同国は国是としてここに注力しており、フィンランドと同じく、以前からオンラインプラットフォームが整備されていました。中心となったのはやはりオンライン授業ですが、教育相と教育公共放送(EBS)がタッグを組み、テレビとインターネットで授業映像を生放送するなどの対策も実施しました。

オンライン授業を絶対視することの危険性

制度や環境整備の遅れから諸外国と比べてオンライン授業の導入が進まず、生徒や保護者からの不満も漏れ聞こえてくる日本。しかし一方で、オンライン授業を実施したにもかかわらず「やめるべきだ」という声が上がっている国もあります。代表的なのがフランスとフィリピンです。

フランスでも対応は早く、3月12日に休校が発表され、同月16日にはオンライン授業が開始されています。
約80年も前から「国立遠隔教育センター(CNED)」を設立して、通信教育などに力を入れていたからです。近年ではプラットフォームも整備され、コロナによる休校後は、CNEDが提供する教科書を無償提供する形で、オンライン授業ができる環境を作りました。

問題となったのは提供する側ではなく受け手

しかし、問題となったのは授業を提供する側ではなく「受ける側」

フランスは人口の2割が移民という“移民大国”であり、彼らの多くは、貧困や、親がフランス語を話せないなどのハンディーキャップを負いながら学んでいます。端末や回線も持っておらず、オンライン授業実施に対応できないまま、置き去りにされる子どもたちが続出したのです。中には休校中に音信不通になってしまう子どもまで出始め、休校開始約2週間で、政府は「5~8%の子どもたちが、すでに学業についていけていない」と発表。平等に学びを提供するために講じたオンライン授業の環境が、逆に不平等を生み出すという皮肉な結果に、「いっそ全員が(オンラインを)やめるべきだ」という声まで出るようになりました。
なお同国ではこうした問題も鑑み、5月11日から段階的に学校を再開しています。

フィリピンでは他国のように、国が授業のオンライン化を指示したわけではありません。
インターネット普及率が60%程度と言われる同国では、オンライン授業を受けられない環境にある子どもたちが多いためです。

ただし、まったく行われなかったのかと言えばそうでもなく、一部の大学などではオンライン授業を実施しました。しかし、自宅にインターネット環境を持たない学生たちがネットカフェなどに殺到し、店も閉鎖を余儀なくされてしまいました。これを重く見えた政府は「オンライン以外の方法がないか、検討するように」と指示を出しました。

オンラインは何のためか、教育は誰のものか

さまざまな課題はありますが、オンライン授業を含むICTを活用するのは、他でもない子どもたちのため。極論を言えば、単に学習進度の維持や学力担保のためだけならば、プリントを郵送して、採点して返却するだけでも良いのです。

先生や友達との触れ合いがあって、それがもたらす成長があって……それもまた、学校の存在意義だと考えるならば、オンライン授業はそうした意義を補完するにおいて非常に親和性の高いものです。「そもそも『学習進度の遅れ』への懸念は、定められたカリキュラムを消化したい大人の都合にすぎず、子どもたちには関係のない話だ。学習者(子ども)不在の教育議論になっているのではないか」と懸念を示す識者もいます。

何のため、誰のための教育なのか。オンラインの活用は、私たちにそんな本質をも問いかけています。

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